scene-chapter1-7

オヤジの情景
chapter1-7

父は、頭脳明晰、やさ男で、それでいて頑固でワガママな男だった。

イイとこのボンボンで、慶応大学を一発入学、地元では神童と謳われていたらしい。
慶応在学中はテニス選手としてもブイブイいわせて、銀座の街を肩で風切ってカッポしていたという。
一方母は、
意気軒昂、武闘派で、それでいてビビリで、涙もろい女性だった。
私の大好きな祖母の長女だが、祖母が再婚するとき、「子持ちワカメじゃいけない」ってんで、田舎の置屋にオッポリ投げられた。
詳細については、大ボラ吹きで多弁な母だがチンモクを通している。
置屋という場がそうさせたのであろうか、日本舞踊家を夢見る少女になった母は、
ビビリのくせに、10代で家出同然で上京。
20代になってからは銀座でホステスをしながら夢を追いかけていたという。
そうした頃、
父と母は出逢った。
二人はハゲシク恋愛し、
そして駆け落ちした。
父が21歳、母は20歳だった。
ずいぶん後になってからだが、2人から個別に、当時の話を聞いたことがある。
母曰く「東京に出て2年目くらいに、踊りの関係の人から銀座の高級クラブを紹介されてさ。仕方がなくホステスさ。あっという間にNo1になって、派手な生活をしたものだよ。お父さんはその店の常連で、偉そうにしてたけど、実はウブで…。ンまあ、つきまとわれて困ったものさ…。」と云っていた。
父曰く「お母さんが銀座でホステス?違うよ…。銀座は銀座でも新橋寄りのスナックでバイトしていたんだよ。ウブでケナゲで可愛い娘だったなぁ。ンまあ、ちょっとジャジャ馬だったけど、俺に夢中でね。つきまとわれて、大変だったよ…。」と云っていた。
ともあれ父と母は出逢い、そして大恋愛の末、駆け落ちする。
そのまま父は大学を中退、神童と謳われたエリートは『駆け落ち』というカンバンを背負って、
母とともに世間の荒波の中へと打って出たわけである。
だけどヤッパシ世間の荒波はキビシカッタ…。
父と母の駆け落ち生活は1年くらいで終わりを遂げた。
ようするに二人は、父の実家に許しを乞うて結婚したのである。
まぁ思い切って駆け落ちした割には呆気なく結婚したものである。
これは父の仕業であろう、イイトコのオボっちゃまの必殺技で、ありがちなことである。
ところで、この駆け落ち。もうひとつ逸話がある。
続く

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