scene-chapter1-18

chapter1-18
私は皆と共に腕立て伏せの姿勢をとった。
その時、私は意外な光景を目にした。
飯田先輩も、腕立て伏せの姿勢をとったのである。
こうした場合、TVドラマなんかだと、先輩は竹刀かなんかを肩にのせ、ノシノシ歩きながら「気合入れろ!バーロォォ!」だなんて云う情景である。
ところがそれが違っていた。
飯田先輩は、清く正しく美しいココロの先輩だったのだ。
「いーち!」と云って、飯田先輩が腕立てを率先する。
否が応でも我々は後を追わねばならない。
20回ぐらいで、1人脱落した。
飯田先輩は構わず続ける。
30回くらいで半分落ちた。
そして50回を終えた。
奇跡が起きた。
私は腕立て伏せ50回をクリアしたのである。
できちゃったのである。
念のためもう一度云うと、やってのけたのである。
私は『巨人の星』の星飛雄馬のように天を仰ぎ、涙しようとしたが、だが飯田先輩は私のことなど目もくれず「次!腹筋50回!」と、息も切らさずケーカイに号令した。
私は再び驚いた。
私は腹筋も50回だなんてやったことがないのである。
腹筋は2人一組で交互に足をおさえて運動する。
私のパートナーは、腕立て伏せの脱落組であり、既に『顔面蒼白』『意気消沈』『戦意喪失』状態で、今にも泣きそうな顔で私を見つめている。
私は彼が気の毒に思えた。
とはいえ、同情している場合ではない。
私は自分のことで必死だった。
思えばこんなにも必死になることなど一度もなかった。いつも母が守ってくれた。
だが今ここに母はいない。
私は必死になった。
そして、
再び奇跡が起きた。
続く。

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