sicene-chapter-1-20

chapter1-20
『校門まで駆け足往復リレー』は10回ぐらい繰り返して終わった。
つまり全員が10回づつ雨の中を走ったわけである。
私のチームはこのリレーに勝った。
だから、ペナルティは避けられたのだが、はて、そのペナルティーがなんであったかはよく覚えていない。
部の更衣室に戻ると、
体育館で練習していた先輩方も更衣室にもどっていて、着替えを終えつつ雑談をしていた。
話題はもっぱら我々一年坊の話。
「どうなの、今年の一年は…」「根性あるのいた?」ナドと会話している。
我々一年坊は更衣室の隅で、ビショ濡れの体操着のまま、先輩方の雑談をシンミョーに聞いていた。
すると飯田先輩が、私を指さし「山路がガンバったよ。」とおっしゃってくれた。
「えっ、誰だって?」
「ヤマジ?」
「ホントか?」
他の先輩は一様に驚き、私を見つめた。
 
あとで聞いた話だが、私の入部には議論があったようだ。
あの体で大丈夫なのか?ついてこれるのか?
で、結局『マスコット』扱いで入部が決まったんだそうだ。
ようするに『味噌っかす』である。
「ホントだよ。こいつが一番根性あったよ。」と飯田先輩は重ねた。
おおおっ!と歓声が上がった。
キャプテンの山崎先輩が「そうかぁ、頑張ったなぁ。」
立石君のお兄さんの立石先輩からも「むむむっ、エライ、エライ!」と声をかけていただいた。
私は『千福万来』というモンゴンをこの時初めて知った。
そして周りを見て、
『破顔一笑』というモンゴンもこの時初めて知った。
帰宅して、出勤前のケイコお姉さんに、出くわしたので早速報告した。
ケイコさんは、私を抱きしめてくれた。
いい匂いがした。
ケイコさんの彼氏は「ヨシっ、よくやった!これからはスポーツマンなんだから、なんでもワッシワッシ食べなけゃダメだぞ!」とアドバイスしてくれた。
私はこの一言がキッカケでホボ偏食が治った。
深夜、いつものように母をお迎えに千歳船橋の駅で最終電車を待った。何よりも誰よりも母に話したかった。
そして話した。無我夢中になって、大きな声で話した。
母は立ち止まり、暫く私を見つめ、そして号泣した。
続く。
*-味噌っかす-子供の遊びなどで、一人前に扱ってもらえない子供のこと

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